森の奥に、ぽっかりと口を開けた洞穴があった。
外から見えにくく、奥は意外と広い。
夜風も防げる。
「よし、ここなら少しは休めるな」
ミアは足を引きずりながらもついてくる。
さっきまで泣き腫らしていた少女とは思えないほど、表情に安心が戻っていた。
「おじさん……ここ、安全なの?」
「安全とは言い切れないけど、森の中じゃ上等だよ。
とりあえず火をつければ、魔獣は近づかない」
そう、異世界でもキャンプの基本は変わらない。
■ キャンプスキル、発動(生活の知恵)
洞穴の端から乾いた枝を集め、
小枝 → 中枝 → 太い枝の順番で組む。
そして──ポケットから火打ち石。
「えっ!?おじさん、道具持ってたの!?」
「転生ボーナスらしい」
(本当はポーチの中に“最低限のサバイバルセット”が入っていた。神の配慮だろう。
戦闘力ゼロのおっさんが即死しないように。)
火花が散り、小枝が“パチッ”と音を立てて燃え始めた。
洞窟の中に、温かな橙の色が広がる。
ミアの緊張が一気にゆるむ。
■ 足首を固定する
「ミア、足見せて。痛むだろ?」
「う、うん……」
俺は袖を裂き、布を帯状にする。
「おじさん……服、もったいないよ」
「大丈夫。どうせ冒険者っぽい服買わないといけないしな」
足首を触ると、ミアが小さく震えた。
「ごめん、痛むよな。でも大丈夫、折れてはいない。
軽い捻挫だ。固定すれば歩けるようになる」
布を巻き、添え木代わりの枝で軽く固定する。
ミアは驚いた顔で言った。
「おじさん……なんでこんなに優しいの……?」
「優しいんじゃなくて、こういうのが慣れてるだけさ。
人の怪我や困りごとを見ると、つい手が出るんだよ」
ミアはしばらく黙って俺の手元を見つめていた。
■ ミアの沈黙──そして、秘密
固定が終わると、
ミアは火を見つめたまま、小さく呟いた。
「……わたしね、追放されたの」
「うん、聞いたよ。
でも、追放される理由ってのは色々ある。
ミアは何を“しちゃった”んだ?」
ミアは首を振る。
「ちがうの。
わたし、何もしてないの。」
俺はトライ・アナライズをそっと発動する。
少女の心の波形。
声の震え。
呼吸のリズム。
視線の揺らぎ。
体温の変化。
──嘘はついていない。むしろ“言えない何か”がある。
「ミア、その……言いたくないなら、無理に話さなくていいけど。
ここにいる間ぐらいは、安心していい」
すると、ミアは震える声で言った。
■ ミアの秘密①:魔族の血
「……わたし、魔族なの」
火の音が止まったように感じた。
「村の人、怖がるの。
普通の人より耳がよくて、力があって、
ときどき魔力が漏れるから……」
彼女の瞳が淡く光った。
「でも、わたし何もしてないの。
ただ……怖がられて、追い出されたの」
■ おっさん、即断
俺は肩をすくめて言った。
「……なるほど。
ミア、安心しろ」
ミア「……え?」
俺「俺の世界にも似たようなこと山ほどあった。
“違う”ってだけで排除される……まあよくある話だ」
ミアの目に涙が溜まり、こぼれ落ちる。
「わたし……ほんとに、悪いことしてないの……」
「知ってるよ。
トライ・アナライズで、ミアが嘘ついてないことは分かってる」
ミア「ほんと……?」
「ああ。俺は信じる」
ミアは、声を上げて泣いた。
泣き疲れ、俺の横で眠りにつくまで泣き続けた。
🔥 ■ そして、トライ・アナライズが告げる“伏線”
ミアが眠った後──
薄く光るスキルの残滓で、俺は“未来の可能性”を読み取った。
──ミアは、この世界の核心に触れる存在。
──少女の追放は偶然ではない。
──この世界の“構造の歪み”が、彼女を追い出した。
「……なるほど。
この異世界、やっぱり放置できねえな。」
炎を見つめながら、俺は静かに決意した。


コメント