教会騎士団から逃げ続けて数時間。
ようやく視界の先に石造りの町が見えてきた。
「はぁ……はぁ……ここ、入っても大丈夫……?」
ミアが息を切らしながら聞いてくる。
「大丈夫だ。
ここは“辺境の中都市”で、教会の影響が薄い。
むしろ冒険者ギルドの力が強い」(トライ・アナライズで確認済み)
「冒険者……?」
ミアは不安げに俺を見る。
(そういえば“ギルド”という概念も知らないのか……
ミア、本当に守られてない世界で生きてきたんだな)
「とにかく、まずギルドで寝床と仕事を確保する。
ミアの魔力はこれから絶対狙われる。
金と居場所が必要だ」
ミアはこくりと頷いた。
■ 冒険者ギルド、初訪問
ギルドの扉を開いた瞬間──
中は怒号と笑い声でごった返していた。
- 酔っ払い気味の戦士
- 装備を手入れする槍使い
- 魔法使いらしき女性
- 荷物整理する新人たち
ミアは怯えて俺の服を握る。
「おじさん……怖いよ……」
「大丈夫、俺も怖いから」
「そんなこと言わないでぇ……!」
(いや、本音なんだよな……
この見た目の脳筋達の中に、50代のおっさんが入るの普通に怖いわ)
■ カウンターでの登録
受付嬢はポニーテールの鋭い目をした女性。
能力高そうだが、ちょっと気が強いタイプだ。
「冒険者登録?
二人とも?」
俺「いや、登録するのは俺一人。
ミアは同行者で……えっと、保護対象みたいなものだ」
受付嬢「保護対象?
まあいいわ、とりあえず登録するならステータスカードを出して」
差し出された水晶に手を置くと──
【姓名】晴一
【年齢】52
【種族】人間
【職業】分析士
【戦闘能力】:−
【筋力】:E
【敏捷】:E
【耐久】:E
【魔力】:D
【特殊スキル】:
《トライ・アナライズ》
《傾聴:EX》
《調整力:S》
《気づき力:S》
受付嬢「………………え?」
ギルド内の全員「………………誰?」
(あ、これ空気ヤバいやつだ)
■ 結果、想像通りの扱い
受付嬢「えーっと……戦闘能力、ない……?」
俺「ないです」
受付嬢「筋力……E……?」
俺「はい。重い荷物は持てません」
後ろから聞こえる野次。
「戦えねぇなら帰れよ!」
「おっさん、分析って何すんだよwww」
「剣も振れねぇのに冒険者?命知らずか?」
「ステータス詐欺じゃねぇの?」
ミアは怯えて俺の袖を掴む。
「おじさん……やめよ……?
こんな人たち……怖い……」
俺は優しくミアの頭を撫でた。
「大丈夫。
“分析士”がどれだけ役に立つか、見せてやる」
ミアはこくんと頷く。
受付嬢は困惑しつつも言う。
「冒険者登録には最低条件が…
戦闘能力か、工芸スキルか、魔法スキルのどれかが——」
「どれもないです」
受付嬢「そ、そう……よね……(困惑MAX)」
受付嬢はギルドマスターを呼ぶしかなかった。
■ ギルドマスター登場
ギルドの奥から、
筋肉が岩みたいな大男が現れた。
「おう、何だ騒がしい。
……ん? おっさん?」
俺「登録したいんです。職業は《分析士》です」
ギルドマスター「《分析士》……?
お前、何ができる?」
俺「なんでも“読み解けます”。
生態、心理、構造、人間関係、嘘、未来の流れ……」
ギルドマスター「はぁ??」
ギルド内「(また変なやつ来た)」
(まあ、普通そうなるよな)
■ 突然の依頼者登場
そこへ慌てた男が駆け込んだ。
「ギルドマスター!!
頼む、誰か来てくれ!!
村の井戸が突然枯れちまったんだ!!
水が出ねえ!!」
ギルドがざわつく。
「枯れた?」
「原因わかんねぇのか?」
「魔獣か?毒か?」
「呪いじゃねぇだろうな……」
依頼者「わからねえんだよ!!
井戸の周りに“誰かが掘り返したような穴”があって……!
でも正体がわからねぇ!!」
(……なるほど)
俺は静かにスキルを起動した。
《トライ・アナライズ》
- 井戸枯渇の原因:外的要因
- 穴の形状:細長い・一定間隔
- 生態:音に敏感・夜行性
- 魔獣:地中型
- 性質:水脈探知行動
- 被害規模:軽度
- 必要対処:特定の音で追い払う
- かかる時間:1〜2時間
(これは簡単だな)
俺は依頼者に言った。
「井戸の底は“空洞”になっていませんか?」
依頼者「な、なんでそれを……!?」
「原因は“水脈探知ワーム”です。
音に弱く、特定の周波数を嫌がります。
それを使えば追い払える」
ギルド「……は?」
受付嬢「周波数……?」
俺「石と石を“乾いた音”で高く鳴らせば逃げます。
あと井戸の縁に水を撒けば、一時的に戻ってくるはずです」
依頼者「そんな……そんな簡単に……!?」
ギルドマスター「おい依頼者、試してこい。
本当に当たってたら……このおっさん、登録だ」
依頼者「わ、わかった!!」
男は走り去る。
■ ギルド沈黙
俺はミアに小声で言う。
「大丈夫。ワームの習性は“音”が最大の弱点。
昔の世界でも似たような害獣がいたから想像ついた」
ミア「すごい……おじさん、すごい……」
でもギルド全体はまだ半信半疑だ。
戦士A「いやいや、さすがに当たらねぇだろ」
魔法使い「分析で何がわかるっていうのよ」
盗賊「面白いおっさんだな!」
(まあ、普通はそう思うよな)
■ そして10分後──
ギルドの扉が勢いよく開く。
依頼者「ギルドマスター!!!
で、出た!! 水出たあああああ!!!
あの通りにやったらワームが逃げてった!!!」
ギルド「…………え?」
依頼者「おっさんの言った通りだった!!
あんたすげぇよ!! どこの賢者だ!?」
ギルド内が大爆発する。
「マジかよ!!」
「分析で魔獣の種類わかるの!?」
「なんだそのスキル!!」
「神眼か!? 未来視か!?」
受付嬢は口をぽかんと開けた。
ギルドマスターは腕を組み、にやりと笑う。
「……合格だ。
《分析士》、冒険者登録を許可する」
俺は静かに頷いた。
ミアは俺の腕にしがみつき、嬉しそうに笑った。
「おじさん……すごいよ……!
戦えないのに……すごい……!」


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