14話:森の心臓と“外界からの侵食”

第14話

森全体が揺れた瞬間、空気が凍りついた。
風はないのに木々が震え、地面が低いうなり声をあげる。

ミアが精霊の幼体を抱えるように両手をそっと包み込む。

「……急いで……このままだと、森が全部……消えちゃう……」

ハルイチは周囲を見渡す。
先ほど見えた“影”は消えていたが、空間の裂け目だけが微弱に歪んでいる。

まるで、世界が薄く引き伸ばされているような感覚だ。


■ 《森の心臓》──消失寸前の神域

森の中心へ進むほど、空気は重く、濃く……そして冷たい。

ガルドは顔をしかめながら言った。

「なんだこの感じ……寒気が止まらねぇ……」

ルリエは両手を胸の前で組み、魔力波を探る。

「……ここは、“森の心臓”に繋がってる。
精霊たちの魔力源……つまり、森が森であるための根幹よ」

ハルイチは息を飲んだ。

(つまり……ここが壊れれば、森は消えるのか……?)

その瞬間──

ミアが突然、崩れ落ちるように膝をついた。

「ミア!」
晴一が抱き起こす。

ミアは震えながら囁いた。

「……森の……光が……薄くなってる……痛い……苦しい……みんな……消えちゃう……」

ハルイチはミアの背をそっと支え、頭に手を添える。

「大丈夫だ。ミアは一人じゃない」

その瞬間、
ミアの胸元から柔らかな光がにじみ始めた。


■ “慈愛魔力”と《トライ・アナライズ》の共鳴

淡い緑色の光がミアの手から溢れ、精霊の幼体を包み込む。

ハルイチの体にも温かい何かが広がり──
視界が勝手に開き始めた。

まるで、ミアの感覚が晴一へ流れ込んだように。

《トライ・アナライズ》が暴走しかける。


【解析暴走警告】

対象:森の魔力循環機構
情報量:規定値の2900%
危険:使用者の精神負荷上昇
対策:深呼吸・遮断・外部魔力とのリンク限定化


ハルイチ「っ……!?」

ルリエが驚いた表情で駆け寄る。

「ハルイチ!! 情報の流入が多すぎる! 意識が飛ぶわよ!」

ガルドが肩を掴み、叫ぶ。

「おいハルイチ!! やめろ!! 無茶すんなって!!」

だがハルイチは、歯を食いしばりながら言った。

「……いや……今は……必要なんだ……
ミアが……精霊の声を拾ってる……
それを俺が……“形にする”……!」

ミアが微笑むように晴一に寄り添った。

「……大丈夫……ハルイチ。
私が……支えるから……」

二人の魔力が重なった瞬間、
ハルイチの視界に“森の内部図”が展開する。

そして──


【森の心臓:構造解析】

・中心部に“空洞化領域”
・魔力循環が逆流
・魂力が一点に吸い込まれている
・空間外からの干渉波検知


(やっぱり……“外側”の存在だ……)

ハルイチの脳裏に“黒い影”がよぎった。

あれは森の魔獣でも精霊でもない。
この世界の“理”に属さない存在。

まるで──

世界の壁を破って侵入してくる『異物』。


■ “侵食”の正体──影の残した痕跡

森の中心へたどり着いたとき。
そこには、異様な光景が広がっていた。

巨大な大樹の幹に、
黒い“焼け跡”のような痕が刻まれている。

だが、それは焼け跡ではない。

ルリエが震える声で呟いた。

「……これは……空間そのものが“削られて”る……
魔力も、魂も……根こそぎ……」

ガルドは拳を握りしめ、大樹に触れようとする。

「許せねぇよ……こんな森の子どもまで……」

ミアはそっと大樹に触れ──
ふわっと光を広げた。

「……大丈夫……
まだ……間に合う……」

精霊の幼体がミアの胸元で光り、
ミアの魔力と混ざって輝き始める。

ハルイチはその光を見て確信した。

(ミアの“慈愛魔力”……これが唯一の治癒手段なんだ)

だが同時に、
《トライ・アナライズ》が新たな表示を出す。


【外界干渉の源:不明】

・世界外構造からの“引き込み現象”
・精神体・魔力体への高い吸引
・危険度:S級以上
・討伐ではなく封印推奨


(……これを野放しにしたら……
森どころか町まで消える……)

ハルイチの決意が固まった瞬間だった。

大樹の裂け目が“音もなく”動いた。

ゴウ……ッ……

ガルド「おい……動いてる……!?」

ルリエ「違う! 空間が……開いてる……!」

ミアが泣きそうな声で叫ぶ。

「来る……!
“あの子”を吸いに来る……!」

ハルイチは叫んだ。

「みんな!! 精霊を守れ!!
あれは――“こっち側の存在じゃない!!”」

裂け目の奥で、
ゆらりと黒い影がこちらを見ていた。

多くの目を持つ、形の定まらない“侵食者”。

世界外の存在が──
とうとう“姿を現した”のだ。


第15話:「異界の影──“侵食者”との邂逅」

第13話:「森の亡霊と“導きの光”」

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