地面に落ちたとき、最初に思ったのは。
痛っ。
次に思ったのは──
なんか獣の息が近い。
視線を上げると、そこには巨大な狼型の魔獣がいた。
牙むき出し、明らかに腹ペコの目。
「いやいやいや、転生して即ゲームオーバーはやめて……!」
逃げられない。
戦えない。
武器もない。
だが──
俺の中で、何かが“立ち上がった”。
《特殊スキル:トライ・アナライズ発動》
世界が立体化していく。
魔獣の動き。筋肉の張り。
呼吸。視線の揺らぎ。
周囲の環境。風向き。
木に実る果実の香り。
そして──
獣の状態:極度の飢餓
と浮かび上がる。
「ああ……お前、腹減ってるだけか。」
俺は木から落ちていた果実を拾い、そっと前へ転がした。
魔獣は一瞬だけ俺を見、
果実へと向かい、モグモグ……。
そしてそのまま、森の奥へと歩いていった。
⭐ 主人公のステータス確認
「……ステータス表示!」
【名前】晴一(ハルイチ)
【年齢】52
【称号】異世界の叡智の賢者候補
【職業】分析士
【スキル】
●《トライ・アナライズ(Tri-Analyze)》
- 世界・現象・心理・因果の立体解析
●《傾聴:EX》
●《調整力:S》
●《気づき力:S》
●《胆力:C》
●《戦闘能力:−(上昇見込みなし)》
「……戦えないのは分かってたけど、ダッシュで“−”かよ」
その時、遠くから悲鳴が聞こえた。
また問題か?
いや、でも──
こういうのを放っておけない性格なのが、俺だ。
「よし、行くか。」
おっさんの異世界冒険が、今、始まった。


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