冒険者ギルドでの大逆転──
《分析士=戦えないゴミ職》という烙印を覆し、
俺は正式に冒険者になった。
ミアはギルド内の喧騒にも少し慣れ、
俺の横にぴったりくっつきながら小さく笑っている。
(よしよし……ミアが笑える環境をまず一つ確保できたな)
だが……
静かな違和感が、俺の胸に残っていた。
スキル《トライ・アナライズ》が、時折“ざわつく”。
何か……
“この世界の構造そのもの”が軋んでいるような、
そんな異音を感じるのだ。
■ ギルド外へ出た瞬間──異変。
町の通りに出たとき、ミアがピタッと立ち止まった。
ミア「……あれ? なに、この感じ……」
俺「ミア、どうした?」
ミアは胸元を押さえ、苦しそうに息を吸い込む。
ミア「なんか……胸が、ぎゅうって……
嫌な……感じ……
誰か、泣いてるみたい……」
(泣いてる?)
その瞬間、俺の視界が立体化した。
《トライ・アナライズ発動》
〈ミアの魔力反応:高感度共鳴〉
〈感知対象:魔獣の“恐怖”〉
〈距離:1km圏内〉
〈状態:群れのパニック〉
〈原因:不明の刺激〉
〈被害予測:暴走 → 町の外郭に衝突〉
(……これは、まずいぞ)
■ 町中に響く大音量の鐘
「ドォォォォォォォン!!」
大きな鐘の音が町に鳴り響いた。
ギルドの扉が乱暴に開き、
受付嬢とギルドマスターが飛び出してくる。
受付嬢「魔獣の暴走!? なんでこんな時期に!」
ギルドマスター「原因不明だ!
街道沿いの森から魔獣の群れが向かっている!
討伐隊を急げ!!」
冒険者たちが武器を取り出し、次々と駆け出す。
その中で、ミアは小刻みに震えていた。
ミア「いや……いや……
あのコたち……怖がってる……
誰かが……ひどいことしてる……!」
俺はミアを抱き寄せた。
「ミア、落ち着け。
“あのコたち”?
知ってるのか?」
ミア「ううん……知らない……
ただ……
声が聞こえるの……!」
俺は瞬時に理解する。
(ミアの魔族の血──“共鳴属性”か。
魔獣の「感情」を拾っているんだ)
この世界の魔獣は単なるモンスターじゃない。
恐怖で暴走するということは──
“何かに追われている”
もしくは
“棲み処が壊された”
どちらかだ。
■ ギルドマスターが俺に向き直る
ギルドマスター「分析士!!
お前、魔獣の生態に詳しいんだろ!?
原因がわかるか!?」
俺は短く息を吐き、スキルを再発動した。
《トライ・アナライズ:拡張解析》
〈魔獣群の状態:“逃走”〉
〈逃走方向:町とは逆方向→不自然〉
〈刺激源:聖属性の魔力〉
〈発生源:北の森の奥〉
〈正体:教会騎士団の聖印魔法〉
〈目的:魔族や魔力生命体の探索〉
(……あの野郎ども!
魔族探知の聖印魔法を使って魔獣を追い立てたのか!
あれは魔獣にとって拷問級の痛み――
そりゃ暴走するわ!!)
俺はギルドマスターに告げた。
「原因は教会騎士団の“聖印魔法”です。
魔族探知のための術ですが……
あれは魔獣にとって“激痛”でしかない」
ギルドマスター「なっ……!?
じゃあ、奴らのせいで魔獣が暴走してるのか!」
俺「ええ。
魔獣は戦いたくて来てるんじゃない。
“逃げてきてる”んです」
ミア「……かわいそう……」
俺はミアの手を握った。
■ そしてスキルが告げた未来
〈最悪シナリオ:町外郭の民家破壊〉
〈死傷者:小規模〉
〈魔獣:ほぼ全滅〉
〈教会騎士団:現場を“討伐成功”として報告〉
〈世界の歪み:悪化〉
(……ふざけるな)
魔獣も。
ミアも。
人も。
何も悪くないのに、
“正義の名”のもとに全部踏みつけられる。
俺はギルドマスターに言った。
「俺に“時間”をください。
暴走を止められるかもしれない」
ギルドマスターの目が大きく開く。
「本当か、分析士……!?
戦えないお前が……どうやって?」
俺は静かに答えた。
「戦えないからこそ、できることがあります」
ミアが俺の横で震える声で叫んだ。
「わたし……行く!
魔獣たちの気持ち……もっと聞けるかもしれない!」
ミアの魔力が、小さく光を放つ。
俺は決意した。
「行こう、ミア。
“暴走を止める方法”を見つけるぞ」


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